140字小説一覧|

*1月|2015年2月|3月#
酒井強化月間(DC2)
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『明日の確認は』「済んでます。駐車場も確保済」『卒業と同時に納車、間に合いそうね』二人の視線は磨き上げられた一台の車へ向かう。『頑張ってたもん』「お陰で随分安く上がりました。免許取ったばかりの頃を思い出しましたよ」『何その話、詳しく聞きたい』「それじゃあ明日にでも」約束がひとつ。
※無題※酒井 (2015.02.28)


味気のない笑顔だらけの酒席は退屈極まりない。御酌する私も愛想笑いなのでお互い様。一次会はお開きとなりそうだ。社長の目配せに頷き店を出ると「お疲れ様です」恋人は助手席ドアを開けるが運転席へ回り『こっちがいい』とせがむ。「勿論。どこへでもお供しますよ」シートへ腰を落とし酒井が笑った。
【味気のない笑顔だ】(2015.02.28)


コーヒーカップを前に深刻な面持。恋人が隣で呻く。『…にがい。ブラックの意味がわからない』「お子様ですね」大仰に溜息を吐いてみせると唇を尖らせた後こちらへ舌を突き出した。肩を抱き寄せ、舌に舌を絡め吸い上げる。熱く濡れた粘膜はほんのり紅い。途惑うように咥内で震えた。「美味しいですよ」
【2/28のお題】味覚 (2015.02.28)



等身大の生き方しか出来ない。独り言は聞かれていた。「何がですか」『べつに。酒井が背伸びしたら私は余計届かないね』俯くとパイプ椅子ごと引きずられ真正面から向き合う。「俺はいつでもあなたの手が届くところに居ます」『ここどこかわかっ』「休憩室ですね」身体を捩る隙も無く、額に唇。
#Dカレ 酒井 (2015.02.27)


それじゃあバイバイまた明日。運転席で振り返す手を止め「あの」近付き窓を覗き込もうとする彼女を制しドアを開けた。「もう一度、抱き締めてもいいですか」抱き締めるつもりが抱き締められて、嬉しいのと恥ずかしいのとがない交ぜに。『顔ユルいよ酒井』くすくす笑う彼女を繋ぎ止める腕に力を込めた。
【2/27のお題】去り際 (2015.02.27)


丹精込めて育てた花を手折るような美しくも無慈悲な手付きだ。雑に積まれた領収書とレシートの束に向かい、彼女は黙々と作業を続ける。原稿執筆中の社長が「コーヒーくれ」と疲れた声を上げた。恐らく彼女へのリクエストだろう。「今話し掛けない方がいいですよ」小声で社長に進言し給湯室へ向かった。
【2/25のお題】手折る (2015.02.25)


『川井くぅん。今日ヒマ?』定時間近の問い掛けに同僚は冷たい視線を寄越す。「何が目的だ」『私今アシなくてぇ、ウチまで送ってくれると嬉しいなぁ』「構わんが、その口調はやめろ」『精一杯の甘えでしょうが。買物付き合ってね』「…自宅まで送るだけだろ」『私そんな事言った?』重い溜息。
#Dカレ 川井淳郎 (2015.02.25)


金属を彼女の右手に回した。訝しげにこちらを覗き込む彼女へ「玩具ですよ」笑んでみせると納得したように頷き、手錠を見つめる。この部屋から出したくない、本音は隠せているだろうか。『も一つどうするの』「これでどうですか」自ら左手首に嵌め指を絡めると手錠同士ぶつかり冷たい音が鳴る。
#Dカレ 酒井 (2015.02.24)



冬が遠くで泣いている、そう呟いた彼女は寝惚けているようだ。曲線を描く肩を抱き寄せると、暗く冷えた朝に二人の身体だけが温かい。やがてベッドから抜け出そうとする彼女を引き留める。「今日は休みでしょう」『酒井日勤でしょ。朝ご飯できたら起こすから寝てな』明らかに眠そうな笑顔が向けられた。
【冬が遠くで泣いている】(2015.02.24)


世界が揺れた。いや、揺れたのは私自身だった。図書館の階段を降りる最中、眩暈に襲われ手摺を掴む。「大丈夫か」声の方へ目を向けるが明滅するような視界で相手の顔も判らない。だけど誰かは解った。辛うじて返答する。『酒井くん』「そのままでいい、医務室に行こう。手、繋ぐぞ」大きな掌が触れる。
【世界が揺れた】(2015.02.24)


舞台上で軽やかに踊る〈彼女〉を日本で観るのは今日が最後。会場内に拍手と歓声が渦巻く。『お疲れさん』初めて渡す花束が別れの挨拶とは。受取る彼女は驚いたように目を見張りそれでも嬉しそうに笑った。『送るよ』「黄色いエボで?」『勿論』言えない気持ちはまだ、心の中に仕舞っておこう。
【2/24のお題】軽やかに #Dカレ 小早川 (2015.02.24)


「酒井先輩!」サークル勧誘の波を越え辿り着いた部室棟。階段を駆け上り扉を開けて飛び込む。『元気そうだな。改めて合格おめでとう』彼は柔らかく笑み、こちらへ手を差し伸べた。「教えてほしい事がいっぱいあります」『ああ。俺も教えたい事が山ほどあるよ』私のキャンパスライフが始まる。
#Dカレ 酒井 (2015.02.23)


心も身体も私のすべてを、どうか、あなたの腕の中に。「さらってよ、」出来る事ならそうしたいと、嘘でもいいから言ってほしかった。期待とは裏腹に、向かい合う豪はただ哀しげに微笑んでみせる。「…意気地無し」呟き俯くと手首を掴まれ、NSXのボンネットへ引き倒された。『後悔すんなよ』
【2/23のお題】意気地無し #Dカレ 北条豪 (2015.02.23)



『何を持っていったらいいですかね』運転席から真剣な顔で酒井に訊かれ、思わず苦笑が漏れる。「気ぃ遣わないでよ」『ご挨拶なんですから手ぶらでは行けません』「何でもいいって」『困りましたね』「来週、探しに行こーか」『是非』弾んだ声の後、車内に二つ笑みが漂う。信号が青に変わった。
#Dカレ 酒井 (2015.02.22)


『今日何時に終わる?』休憩中、眠たげな声の電話に定時を返答。『わぁった。ビル前にいっから』「駐車場!あんな目立つの路駐しないで」『カッコイイと言えー』「啓介君のFDは世界一かっこいいよ」『当然。待ってっから、終わったら電話くれ。根詰めねーで体力残しとけよ、オレのためにな』
#Dカレ 高橋啓介 (2015.02.21)


軽々と死線を越えそうな、危うい儚さを自らの淵に湛える。恐らく些細な切っ掛けで溢れてしまうだろう。華奢ともいえる彼の身体が舞い踊り、辺りには意識を手放した男達が倒れていた。「"心配"してくれたんだ?」多量の返り血を浴びた事など気にも留めず哂う。『奈緒巳君、』彼の名を呼ぶ声が震えた。
【2/21のお題】ぎりぎり (2015.02.21)


御木が屋上でサボってるのは知ってる。火を点けたばかりと思しき煙草を取り上げ咥えてみた。「ンだよ」むせて咳込む私を見つめ、呆れたらしい。「勢い良く吸うなバカ、肺にイったろ。吸い方教えてやるから返せ」咳が収まらないまま涙目で一度頷く。こんな屑に惚れてしまった事が私の運の尽き。
#Dカレ 御木 (2015.02.20)


駅前を歩くと視線が吸い寄せられた。身体に軸など存在しないような足取りでこちらへ向かってくる背の高い男の子。「あっれェ、ひさしぶりじゃん」私を視認しヘラっと笑う。「また遊ぼーね」擦違い様ポンと頭を撫でられた。彼の後ろから"美麗"の子達が続く。"頭"を護る親衛隊。私じゃ彼を救えない。
【2/20のお題】軸 (2015.02.20)



『健さんじゃない』呟きに「悪かったな」カイの苦笑が返された。「オレじゃダメか?」『健さん優しーし教えんの上手だもん』「はいスイマセンした努力します。じゃ始めるか」MR2の運転席を開けて彼が笑う。『お手柔らかに』「なんだって」『…ビシビシしごいてください鬼教官』「任せとけ」
#Dカレ 小柏カイ (2015.02.20)


純白の特攻服を身に纏う彼はいつもより大人びて見えた。「もしか、ドキドキしちゃった?」顔を覗き込まれて俯く。…見透かされてる。嬉しそうに笑んだ唇が欲しくなり胸元へ手を伸ばすと、指先に"横浜"の刺繍が触れた。「ちゃんと"おねだり"してみせてよ」強く抱き締められ、間近で視線が交錯する。
【2/19のお題】ねだる (2015.02.19)


週末の予定を聞かれ『梅まつり』と返事。「行きたいんならつれてくが…特別珍しいもんでもないけどなあ」ぼやきながら携帯で天気をチェックし始める。『写真撮りたい』「おう、オレもだ。嬢ちゃんの写真ならキレイに撮る自信がある。素材がいいからな」喜色満面、つられて私も笑った。
#Dカレ 星野好造 (2015.02.19)


ガレージで向かい合う彼が苛立つ理由が判らない。私の手に在る資料を取り上げ「全然自覚していないんですね」と言い放った。思考を巡らせようやく一つ思い当たる。しつこく連絡先を聞いてきた〈お客様〉の事なら、心配いらないのに。「心配させてくださいよ。カレシの特権でしょう?」
#Dカレ 酒井 (2015.02.19)


給油口が開けられ燃料が注ぎ込まれていく。『まだこれ乗ってんだ?』「気に入ってんだよ」『ふうん。ま、似合ってんじゃない』「おまえ相変わらずひねくれてんな」『…なんだと』「隣乗りたいって言やいいだろ」『は?調子乗んな』無表情を装い窓を拭き上げる彼女の頬は、カプチーノのボディと同じ赤。
【2/18のお題】ひねくれ者 (2015.02.18)



『細目、ツナギ、高身長…』昼食を待つ中、隣で先輩兼恋人が呟いた。「何ですか」『属性』彼女は事も無げにグラスを空にし、ピッチャーから勢い良く水を注ぐ。「ツナギはうちの全員に当てはまりますよ」『なんでもいーよ。私が酒井のこと好きなんだからさ』カウンターにB定食のトレイが二つ置かれた。
【2/17のお題】属性 (2015.02.17)


勘違いはどうしたら晴れるの。「啓介さんに渡すのか?がんばれよ」あっけらかんと笑ってやがる。中身は勿論ラッピングにも気合入れてるのは〈誰〉のためだと?『私あの中に入るつもりないよ』大勢の女子に囲まれた啓介さんを指す。「なんで?」『なんでって、』「諦めんなよ!」『だから違うってば!』
【2/14のお題】争奪戦 (2015.02.14)


青いバラードをうたう夜。S13と180SXに照らされた女性が「話って?」と見渡した。同時に話し始めた彼等を遮るように尋ねる。「お誘い?」三人の中に落ちた沈黙を肯定と捉えて微笑い「捕まえて口説き落としてみせてよ」艶やかな熱を残した彼女が駆る青いティアナは、秋名に夜明けをつれてくる。
【青いバラードをうたう】(2015.02.14)


ファミレスの隅でぐんにょり項垂れていると上から声が降ってきた。「今日は帰ったら?」眼前にカップが置かれ顔を上げる。「ぬるま湯。薬いる?」沙雪がポーチから市販薬を取り出した。「病院紹介するって。女医さんだし安心よ」『…ついてきてくれる?』「モチロン」持つべきものは、頼れる女友達だ。
【2/13のお題】常備 (2015.02.13)


プライドを取り戻す方法は一つ。『文太、勝負!』店先で仁王立ち相手を見据える。「商売のジャマだ」『暇そう』「…また菓子の話か」『当然。試作3号よ』焼きたてのおからクッキーを突き付けた。『今日こそ販売開始すんだから』「好きにすりゃいいだろ」『あんたに旨いって言わせなきゃ気が済まない』
【2/12のお題】取り戻す (2015.02.12)



何をしても空回りだ。屋上で溜息を吐く。新人じゃあるまいし、あんな凡ミス。「あーきーやーまー君!」のっそり振り返ると〈先輩〉が近付いてくる。「話があるんだけど。今夜、いいかな」笑顔の裏にあるモノを隠そうとしないのが彼女らしい。浅い頷きに「返事」短い指摘。喜んで。苦笑混じりに答えた。
【何をしても空回りだ】(2015.02.10)


免許取り立てで一人旅なんて、夢のまた夢みたいなもの。親の車を勝手に借り一人ドライブへ出たが、何気なく再始動を試みたエンジンがかからず自販機横で立ち尽くす。電波は弱いけど自宅へ電話してみようか。こんな夜中に?指先で迷っていると一台の音を耳が捉える。ミラから降りたひとは女神に見えた。
【2/10のお題】一人旅 (2015.02.10)


諦めるタイミングは既に失くした。後輩と顔を寄せ合い笑う彼女が気にならないなんて大嘘、背を向け作業に取り掛かる。勝手に振り回されている自分は愚かだという自覚は充分。バインダーの角が後頭部に刺さると同時、書類が音を立てた。『確認よろしく!』こちらへ向けられた笑顔ごと受け取るつもりだ。
【2/9のお題】諦めるタイミング (2015.02.09)


私は今朝も私のままだ。いつもより目覚めが良いのは、今夜の約束が楽しみだから?クローゼットを開けて目線を滑らせると自然、唇に笑みが浮かぶ。飲み会は一時間で抜けるつもり。会いたいひとが居る、いろは坂へ。〈進化〉の名を冠した愛車は駐車場で存在感を漲らせ、始動の時を待っているに違いない。
【私は今朝も私のままだ】(2015.02.09)


謎のランプが点灯した愛車を路肩に停めエンジンルームを覗くも何一つ解らない。通り掛かった橙色の車から男性が降りた。私の説明を聞いた彼がコイルと口にする。「エンジン死ぬぞ」脅しでない事は彼の眼つきから理解出来た。携帯で連絡を取り始めた彼を見つめる私の心には、既に小さな火が点いていた。
【2/8のお題】点火 (2015.02.08)



つまらない毎日を繰り返し、自分の心がゆるやかに死んでゆく様をただ眺めている。学校でも家でもイイコでいる事に飽きてきたある日、家庭教師として紹介された女子大生。「はじめまして、涼介君。今日からよろしくね」初々しく頭を下げる彼女の髪が揺れた瞬間、晴れやかな気分で心から笑みを浮かべた。
【2/7のお題】ゆるやかに (2015.02.07)


彼女の瞳は艶やかに濡れていた。平静を装っても、体温がゆるやかに上がっている事は繋いだ手から伝わってしまう。いつもより甘い声で名を呼ばれ、浮足立つようにじんわり上昇していく熱情を気取られないよう口を開いた。「俺はこの手を離すつもりが無いので、相応の覚悟を決めてもらわないと困ります」
【2/7のお題】ゆるやかに (2015.02.07)


やわらかに眠る夜をずっと待っている。恋焦がれて眠れないなんてひさしぶり。年上、きらいかな。とびきり美人じゃないけど見た目はそこそこ、なんてね。鏡に顔をキメてみた。やっぱりこの角度なら戦える、負ける気がしない。明日、勝負に出ようか。いつの間にか3時。さすがにそろそろおやすみなさい。
【やわらかに眠る夜をずっと待っている】(2015.02.06)


真夜中とカフェオレと私の想いが溶け合う。いつものマグカップが置かれ「なあ」こちらを窺う声へ生返事を放ると「結婚しないか」直球にキーを叩く手が止まった。『私フリーターみたいなもんだよ』「ああ」『貯金あんまりないよ』「ああ」『私で、いいの』「勿論」くるりと椅子を回して毅に抱きついた。
【真夜中とカフェオレと私の想いが溶け合う】(2015.02.06)


人間が忘れる生き物で良かった。あなたの前では恰好良い自分で居たい。そう、思っていたのに。「…なんで、そんな…前の事覚えてるんですか」苦虫を噛潰したような声が喉奥を震わせる。『好きな人の事って何でも覚えていたいのよ』輝く笑顔が向けられた。「忘れてください」『残念ながらできません♪』
【人間が忘れる生き物で良かった】(2015.02.06)



またひとつ歳をとって、子供になりたいと思った。恋人との年齢差が開いて嘆くも「何か問題が?」しれっと躱され、なんでもないことのように思えてくる。『でも、』言いかけた私の頭に大きな掌が乗せられた。重みと温もりは穏やかな安堵感をもたらす。「今日はとことん甘やかします。誕生日おめでとう」
【またひとつ歳をとって、子供になりたいと思った】(2015.02.05)


どうせこの世は有限だ。それなら、命燃え尽きる瞬間まで楽しまなきゃ損。背後にぴたりと張り付いたお前、こんなもんか?もっと俺を楽しませてくれよ。アクセルを開けて得られる暴力的な加速、薄っすら笑みさえ浮かぶ。へえ、ついてくるか。バトルってのはこうでないとな。精々、最後まで足掻いてくれ。
【どうせこの世は有限だ】(2015.02.04)


砂丘に立ち尽くして行き場をなくしてる。指の間から零れ落ちていく砂粒の行方は知れない、風が吹き荒れ髪を乱す。巡らせた視線の先に陽炎めいた揺らめきを捉えた。『ボケッとしてんな酒井よう』突然、顔を覗き込まれ派手に転ぶ。『…だいじょぶ?』呆れ声の主が立ち上がり、こちらへ右手を差し出した。
【砂丘に立ち尽くして行き場をなくしてる】(2015.02.03)


赤い花が幸せを象徴している。「どうしたんですか」花束と埃まみれの花瓶を抱えた彼女へ問うてみると困惑顔で『お隣さんが出掛けにくれた』と答えた。『うち今誰も居なくてさ、放っといたらかわいそうでしょ』殺風景な職場の片隅、文字通り花が咲く。『たまにはいいんじゃない』笑んだ彼女も花のよう。
【赤い花が幸せを象徴している】(2015.02.03)


死が生よりも美しく見えた時、私はすべてを手放してしまう。運転席で硬直したまま確信した。崖の淵から優雅に甘美に手招かれ、ここで死ぬのだなと考えているところへ衝撃が走る。暗闇の中でも判る彼のDC2、車体をクッションに私を助けようとしてくれている。ブレーキペダルを力いっぱい踏み続けた。
【死が生よりも美しく見えた時、私はすべてを手放してしまう】(2015.02.03)



誰もがみんな際限ない幸福を求めてる。きっと、俺も同じ。シングルベッドを軋ませないよう身体を退かす。ここに誰かが泊まるなんて想定外、もっと広い部屋を借りれば良かった。彼女の片腕が床へ落ちそうになり、慌てて掴まえる。どこもかしこも温かく柔らかな身体、寝顔を眺めているうち欠伸が零れた。
【誰もがみんな際限ない幸福を求めてる】(2015.02.03)


大丈夫、まだ飛べる。メットとマスクを脱ぎ自分に言い聞かせた。快晴のサーキットには熱気が満ちる。『こっからだよね、酒井』駆け寄る彼女はドリンクボトルを握っている。「当然。俺を誰だと思ってんですか」ボトルを取り上げ微笑ってみせると彼女も笑む。突き付けられた拳に拳を合わせ俺は確信した。
【大丈夫、まだ飛べる】(2015.02.02)


縁取られた私の人生は何色でもない。学校、職業、伴侶さえ親から与えられ何の疑問も持たずに生きてきた。自分でやりたい事など探そうともせず日々を潰しただけ。それもきっと終わるはず。『俊也さん』振り向いた夫は柔らかく笑み、キーケースを放って寄越す。しっかりと受け取った私は今夜、青を纏う。
【縁取られた私の人生】(2015.02.02)


僕は、いらない。他の誰でもない、あなたに必要とされないのなら意味など無い。星空を仰ぐ。『見つけた!』怒号に振り返る。『なにしてんの、手ぇ貸して』腕を引かれ向かった先はガレージ。「誰も残ってないんですか」作業準備をしながら問うと『誰でもいいなんて思ってないよ』強い眼差しに撃たれた。
【僕は、いらない】(2015.02.02)


ライトアップされた夜に身を包む女性を直視出来なかった。エンジンルームを覗き込む彼女はLEDライトを咥えたままこちらを振り向く。『打音がして…なんだかいつもと違う気がするの』不安気な表情さえ魅力的で困る。「大丈夫。いざとなったら俺がなんとかしますよ」あなたの為なら何でも出来るから。
【ライトアップされた夜に身を包む】(2015.02.01)


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