アツアツ。
「大輝ー、できたよ〜」

「うわ、うまそー!」

ダイニングテーブルに並べられた料理を前に、大輝が目を輝かせる。いそいそとチェアに腰を下ろして、勢い良く手を合わせた。

「いただきまーす♪」

「はい、めしあがれ」

しかし大輝は、湯気の上がるスープを前にしてじっと動かない。向かい側に腰を下ろした夢子が問うた。

「どしたの?」

夢子、コレ冷まして」

「そんなに熱くないでしょ」

「熱い。冷まして」

「……猫舌にも程があるよ?」

唇を尖らせて、大輝が上目遣いで夢子を見遣る。苦笑を漏らしながら、ひとすくいのスープにふうふうと息を吹きかけて。

「はい、あーん」

「ん、うま!」

ガツガツと料理を平らげていく大輝を、夢子が柔らかく見つめる。



「ごちそーさまでしたー」

「大輝ホント早食いだよね。ちゃんと噛んでるの?」

「噛んでるよ。……あ、写メ撮んの忘れた」

「そんなに上手じゃないから、写真残されても恥ずかしいよ」

夢子の初めての手料理……」

「こんなので良かったらまた作ってあげるって」

「あーでもオレきっと、今日のこと一生忘れないんだろうな」

「……びっくりしたぁ」

「ん?」

「大輝ってばそんなコト言うんだ」

「……何だよ、悪ぃかよ」

「全然。……嬉しくて、ちょっとびっくりしただけ」

照れたように笑って、夢子が食器を片付け始める。



流しに立つ夢子の背中、結ばれたエプロンの紐が揺れている。後ろからきゅっと抱き締めると、腕の中で夢子が身を捩った。

「なに?洗っちゃうから手はなしてよー」

「後でいいって。オレも手伝うし」

「……大輝……観たがってた映画、今夜放送だって、」

「んなのどーでもいい」

「…………」

どうにか離れさせようと夢子が頭を回転させていると、不意に耳元で囁かれた。



「腹ごなしってコトで」



首筋に、猫舌のくせに熱い大輝の舌が触れる。夢子は微笑いながら目を閉じた。





[アツアツ。] END.

お題:猫舌

2007/03/10 up.


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