HONEY
「はい、大輝。あーん」

「……いらね」

「どして?」

「無駄に甘いから」

「えー。おいしーのに〜」

夢子は大輝に差し出した苺を自分の口に入れた。

2月14日。バレンタインデーの昼下がり。夢子の部屋、久し振りに二人きりで過ごす時間。

甘さを控え目に作ったというタルトは、それでも大輝にとっては充分に甘かった。残った苺に練乳をかけて、ランチのデザートにつついている。

「ハナから甘いモンを更に甘くしてどうすんだよ」

「なによー。おいしぃんだからいいじゃない」

「そのまま食えよ」


辛うじて練乳の侵攻を逃れた苺にフォークを突き刺した。苺の練乳がけ――大輝には理解できない。


「ね、どっか行く?大輝の休み久しぶりだよね」

「んー」

「……疲れてるなら、ウチにいてもいいよ?」

気乗りしないといった雰囲気の大輝を見つめ、夢子は少しだけ肩を落とした。

もともと休みが不規則な職場。夢子と会うのも暫く振りで――大分淋しい思いをさせてしまった、と大輝は感じていた。


夢子

「ん、なに?」

年下の恋人はきょとんと大輝を見つめる。言葉を唇に乗せようとした大輝はそれを飲み込んだ。

「どしたの?」

「いや……」

大輝は立ち上がり、テーブルの向かい側でラグの上にぺたりと座る夢子の隣に腰を下ろした。左手を夢子の肩へ回し、小さく唇を塞ぐ。

「……甘い」

「大輝も、苺の味するよ」

顔を寄せ合いくすくすと笑い合う。些細な事がこんなにも幸せで。


大輝は練乳のチューブを手に取り、ほんの少しだけ指先に出す。夢子の唇にそれを塗ると、大輝は貪るように舐め取った。

「ん、旨い」

「……もぅ」

「もっとくれよ」

「え、……っ!」

優しく押し倒されて白い天井が視界に入る。練乳にまみれた大輝の指先が再度、夢子の唇にそっと触れる。

甘い匂いを強く漂わせたそれを、夢子はちゅくちゅくとしゃぶった。

「うわ、エロい顔。――たまんねぇ」

「……っ」

「ベッド行くか?」

真っ赤になった夢子は大輝の指を咥えたままこくりと頷いた。名残惜しげに唇を離すと「抱っこ」と呟く。

大輝は微笑いながら夢子を抱き上げシングルベッドへ寝かせる。

「隣は?」

「平日だもん。みんな学校行ってるよ」

夢子はサボってていいのかよ」

「いーのっ。大輝と一緒にいたいんだもん」


ドクンと心臓が震えた。夢子の言葉や仕草はどうして――いちいちオレの琴線に触れるのだろう。


「じゃあ気持ち良くしてやるからな」

そして夢子の部屋着を脱がせにかかる。七分袖のセーターに綿素材のボトムはするすると肌を離れてベッドの脇へと落とされていく。


「やだ、明るい……」

ブラインドを下ろしても昼の光は漏れて室内に筋を作っている。下着姿の夢子は胸元を隠すように腕を交差させた。

大輝はシャツを脱ぎ捨てるとニヤリと笑った。

「だからイイんだろ。夢子いつも真っ暗にしたがるし」

「だって恥ずかしいもん……」

「隠すなよ」

夢子の腕を取って抱き寄せた。触れ合う素肌は既に熱い。

背中のホックを片手でするりと外して、窮屈そうに収まっていた二つの丸みを解放した。

うつ伏せに寝かせると馬乗りになり、夢子の滑らかな背中へパタパタと練乳を垂らす。

「ひゃ……」

冷たい感触に驚いた夢子がびくりと体を震わせる。しかし次の瞬間、それを舐め上げる大輝の舌先が触れると夢子はきつくシーツを握り締めた。

夢子は背中弱いもんな」

わざと大きな音を立てながら背中に舌を這わせる。ゆるゆると動いてしまう夢子の腰を見遣り微笑った。

「舐めただけでイケるようになるんじゃねぇの?」

「や……ぁ」

夢子は反論しようと唇を開いたがそれは声にならず、細い喘ぎへと変わる。ぐったりと力の抜けてしまった夢子は頬を上気させて唇を噛んだ。

「あたしばっか気持ちぃの、ズルいよね」

夢子はゆるりと体を起こして大輝を見つめた。少し躊躇しながら大輝のジーンズに手を掛ける。ベルトを外す金属音が響く。

「今日は積極的だな」

「……だって、ひさしぶりだもん」

頬を染めたまま夢子が呟く。ボクサーブリーフを下ろそうとして手を止めた。

「ココ、もう大っきいよ?」

きょとんと見上げる顔にまた、大輝の中心の熱が高まる。

夢子がエロいからだろ」

「……あたしのせい?」

「そうだよ」

夢子は腑に落ちないといった表情で大輝の下着を脱がせ、恐る恐る大輝自身に触れた。

「熱い、ね……」

両手で包み込むようにして大輝自身を口に含んだ。慈しむようにそっと舌を這わせる。


「……うまくなってないか?」

「ん……そぉ?気持ちぃ?」

「すぐイっちまいそ……」

「いぃよ、飲んじゃう、から……」

大輝自身を咥えたままの夢子がくぐもった声で言う。ふと視線が行った夢子の背中は、練乳と大輝の唾液に塗れている。

それにひどく欲情を掻き立てられ、大輝はあっさりと達してしまった。

「うっわ……すげー早かった……」

「……ん……気持ちかった?」

やっとのことで青苦い精液を飲み込んだ夢子が見上げてくる。

あどけない表情に濡れた紅い唇がアンバランスで、眩暈がしそうな程美しかった。

「すっげ気持ちかった」

夢子に深く口付ける。自分の体液で夢子を汚したのだと思うと、大輝の中心はまた熱くなった。



「入れてい?」

優しく組み敷いて耳元で囁く。返事を待たずに下着を剥ぎ取り、自身を夢子の入口にあてがった。

「やぁ……も、入ってる……っ」

そこは待っていたかのようにすんなりと大輝を受け入れた。

「んなこと言ったって夢子のココすげぇ濡れてんだもん。入っちまうよ」

腰を打ち付けながら大輝が言う。シングルベッドの上で弾む夢子の肢体。唇を結んでも尚零れる甘い吐息が大輝の嗜虐を誘う。


「我慢すんなよ。誰もいねぇんだろ?」

胸の飾りに大輝の舌先が掠めた。びくりと体を強張らせた夢子の膣が収縮する。

「っは……きつ……っ」

唇に微笑を浮かべて大輝は夢子の内奥を侵す。昼の光が射し込む室内に満ちる音と匂い。

「や……ぁ……い、っちゃう……」

「まだ早いっつの」

大輝は夢子の足首を掴みM字に開かせ――尚深くを突く。

「……ぁ……深ぃ……」

「全部見えるぜ?」

夢子が顔を覆い嫌々と首を振る。出し入れされる大輝の肉塊は赤黒く充血し硬くそそり立っていた。


「わり、オレがもたねぇ……」

荒い息の下、大輝が呟いて白濁液を夢子の腹部へ放出する。

夢子……大丈夫か?」

くたりと力の抜けた夢子は小さく頷いた。

ティッシュで拭っていると、自ら放った精液が夢子の頬にまで飛んでいて大輝は思わず苦笑を浮かべる。

「……どしたの?」

「すげぇ飛んだ」

ほら、と夢子の頬を指すと、夢子はそっと触れて微笑った。

「ホントだ。すごいね」

その指を口に含んでほんの少し眉根を寄せる。

「……苦ぃ〜」

「バカ。味わうモンじゃねぇだろ」

「だって大輝のだもん」

ぎゅってして、と言うように夢子が両手を差し出す。大輝は右腕で腕枕をし、夢子を抱き締めた。

前戯も後戯も同じくらい大切だと教えてくれたのは他でもない、夢子だった。

「練乳ベタベタすんな。風呂入るか?」

「うん。……でももうちょっとだけ、こうしてて」

右腕の柔らかな重みは温かく、ひどく安心できる。大輝は夢子の目蓋にそっと口付けた。

「甘いモン一年分くらい食った感じ」

「ふふ。そぉ?」

「ああ、もう当分いらねぇ。……夢子以外はな」



Honey so sweet――甘いのはきっと、夢子自身。





[HONEY] END.

2005/02/01 up.


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