夜の桜並木で
「花道くん、このあと少し平気?」
小柄な
夢子サンが、オレを見上げて聞いてきた。
「ヘーキすけど、どーしたんですか?」
「ん、土手の桜並木が見頃だからね、一緒に歩きたくて。付き合ってくれる?」
上目遣いでお願いされて、オレは
「モチロンです!オ、オレも
夢子サンと桜みたいっす。」
と答えるのが精一杯だった。
部活帰り。
日が落ちてすっかり暗くなった夜道を、手を繋いでゆっくりと歩く。
土手沿いの風は冷たくて、火照った頬を気持ちよく冷やす。
夢子サンは、繋いだ手に逆の腕を絡めて、指先も絡めている。
こんなに甘えてくる
夢子サンも珍しい。
それがオレには嬉しくて、足を止めて彼女を抱き寄せた。
「花道くん……」
腕の中にすっぽり包まれた
夢子サンが、かすれた声で名前を呼ぶ。
オレは夢中で
夢子サンを抱き締めて、気付いたら、唇を重ねていた。
「あああああの、スイマセン、何か、その……」
我に返ってしどろもどろになるオレをみて、
夢子さんは「イヤだった?」と呟く。
オレの胸に顔をうずめて泣きそうな声で。
強張った
夢子サンの身体に、オレは漸く、彼女を不安にさせてしまったのだと気づく。
「イヤじゃないっす。
夢子サン、大好きです。」
抱き締めた腕に少し力を入れると、やっと
夢子サンの身体が弛緩する。
'ファーストキスだったのよ?'
そう言って恥ずかしそうに俯く
夢子サンに、
「嬉しいっす。スゲー嬉しい。」
と返せば、
夢子さんはやっといつもの笑顔を見せてくれた。
続く桜並木を、また手を繋いで歩く。
少し進んだところで、今度は
夢子サンが立ち止まった。
オレを見上げて、手に持っていた紙袋を開ける。
「花道くん、今日誕生日でしょ?」
と手渡されたのはシンプルなスポーツブランドのTシャツ。
「いつも使って貰えるものがいいかなって。」
夢子サンは少し照れながら、いっぱい着てね、と微笑むと、目一杯背伸びして、2度目のキスをくれた。
fin
(Tシャツも嬉しいけど、一番のプレゼントは
桜並木の思い出と、彼女のファーストキスだ!)
[夜の桜並木で]END.
writing."
Aprilfool" mimi様
up date.2014/05/26