日常茶飯事?
「あー、その・・・えっとですねぇ・・・・」
先程から言葉として成り立たない台詞を吐いているのは
赤城を拠点とするフリーの走り屋の
夢子である・・・が、この状況下にそれは全くもって関係なかったりする(ぇ
「言いたいことははっきり言ってもらわないとわからないぜ」
「(わかってるクセに・・・)だから、その・・・なんで私は、ここにいるんでしょう」
「飲み物を買いにきたからだろ。そんなことも忘れたのか?」
「そんなに馬鹿じゃないわよ。・・・って、そうじゃなくて!なんで貴方に抱きしめられてるの、って事よ!!」
「・・・・・」
「・・・・・無視ですか」
そう、先程・・・というより10分ほど前からずっとこの調子で、
夢子は高橋涼介に抱きしめられたままなのである。
・・・それも、コンビニ横の駐車場。
夢子の車の前で。
「文句があるなら10分たっても中から出てこない啓介に言ってくれ」
そう、この二人。何を隠そう(何も隠してません)コンビニへ飲み物を買いに行ったきり
全くもってコンビニから出てこない啓介を待っているのである。
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20分前。3人は高橋邸にいた。
と、いうのも
夢子が啓介のレポートの手伝いをしにきたからである。
涼介に頼んだら?と言ってみたものの、
シカトされちまった、との嘆きを聞いたために仕方なく
夢子が来たわけだ。
そしてレポートがもうすぐ完成だという頃に。突然啓介が発言。
「
夢子、ちっとコンビニまで車出してくれねぇ?」
「・・・は?」
「俺の車、目立つだろ。お前今日は“買い物用”の車で来たんだろ?」
・・・何故この男は今日乗ってきた車の用途まで知っているのか。
車を出すか否かよりもそっちの方が気になった
夢子だったが、
夢子自身何か飲みたいと思っていた頃だったので、あえて気にせずに「まぁ、構わないけど」と返事をした。
・・・そこまでは良かった。何故か涼介が「俺も行く」とかなんとか言い出して。
結局狭い車に3人でコンビニへと向かったのだ。
涼介は車内に残り、
夢子と啓介がコンビニの中へ向かい、
夢子は飲み物を買ってさっさと車へ戻った。
そして車に乗り込もうとしたとき。後ろから急に涼介が抱きついてきて先に述べた通りというわけだ。
「啓介〜・・・早く帰ってきてー・・・」
嘆くように呟くのはもちろん
夢子。涼介は明らかにこの状況を楽しんでいる。
「そんなに嫌か・・・」
「嫌じゃないけど、嫌よ」
「・・・どっちだ」
「・・・前者」
「じゃあいいだろ、このままでも。最近恋人らしいこと何もしてなかったからな」
確かに最近お互い仕事やらで忙しくて会っていなかったとはいっても
公衆の面前でこれは結構恥ずかしいものである。
何より涼介の微笑みが一瞬黒く見えたのは気のせいだろうか。
「(・・・はめられた??)」
「気のせいだろ」
「・・・(よまれてる。心よまれてるわ。エスパーね、きっと・・・)」
「俺は普通の人間だぜ?」
「・・・(どこが普通よ。エスパーは普通じゃないでしょ・・・?)」
実は
夢子、無意識に声に出していたのだ。
・・・といっても、耳を澄ませば聞こえるほどの小さな声だが。
「
夢子」
「ぁ・・・」
「あんまり失礼なこと言ってると・・・襲うぞ?」
「・・・不意をつく奴が今更襲うとかっ・・・ぅ〜、もぅ!」
襲うぞ、とかなんとか言う前に素知らぬ顔で接吻するようなこの男に対しての抵抗は無駄に等しく、
時間の経過と共に恥ずかしくなってじたばたする
夢子は涼介にとって魅力の一つでしかなくて。
「あんまり可愛いとまた接吻するぜ」
「拒否!断固拒否よ!!」
「あーあ、またやってるよ・・・。歩いて帰ろうかな・・・」
こんな二人を見て、会計を済ませても車に近寄れない啓介がいたとかいなかったとか。
[日常茶飯事?]END.
writing."
蒼穹の月" 那岐郁様
up date.2005/08/19